この記事を書こうと思ったきっかけがある。それは、新入社員に「Web集客とは」を教えるなかで、Web集客を始める前に整理・準備しておくべきことを考えさせた際、どのまとめサイトにも欲しかった情報がまとめられていなかったこと。
「Web集客 始め方」などでGoogle先生にたずねると、出てくるまとめはどれも、Web集客や広告の種類・特徴といった具体案やその比較を紹介しているものばかり。我々が求めている、何から決めていけばよいのか(進め方)、進めるうえでどのような考え方が必要なのか(マインド)などの本質的な答えをまとめてくれている記事はなく、なんと不便なものかと落ち込む一方で、それならばとペンをとった(正確にはキーボードを叩いた)しだいである。
本記事では、Web集客をこれから始める方々にむけ、机上の空論ではなく、もっと人間味のある内容を中心に、準備しておくべきことや必要になることについてお伝えしたい。もちろん、この記事だけですぐに始められるというものではないが、少なくとも、失敗しないために必要なことを書いているつもりであり、きっとあなたの役に立つはずである。時間があるときにでも、ぜひ一度目を通してもらいたい。
1.最初に決めるべきは目的(ゴール)
ここまで読み進めてくれているあなたは、おそらくこれからWeb集客を始めようと考えている、もしくはWeb集客を始めたが何となくうまくいっていない状態ではないだろうか。ここで前に述べたように「Web集客 始め方」辺りを調べると、その多くが広告の種類やメリット・デメリットばかり。もっと手前の段階で考えるべきことがまとめられてなく、きっとお困りだろう。
我々が考える「Web集客を始めるときに大切なこと」は何よりも
Web集客の目的(何のためにやるのか)
をきちんと設定することである。
あなたは集客によって何を実現したいのか。数値的でも感情的でも構わない。まずはあなたが達成したい目標を決めるところから始めよう。
例えば、
- ●●という商品によって月間売上100万円を達成したい
- ▲▲というサービスを提供して年間1,000人の子供の英語力を上達させたい
など、実現したい状態を決めることで、ようやくWeb集客の目的が定まったことになる。
2.目的(目標)の次はターゲット × 他利他欲
さて、目標を決めたところで次は、その目標を分解していこう。
先ほどの例のうち、「●●という商品によって月間売上100万円を達成したい」を分解すると、
- 商品の価値(値段)
- ひと月に買ってもらうユーザー数(販売数)
この2つの項目をかけ合わせて100万円となれば目標達成であるが、ここで重要になるのが「ターゲット」である。なぜならば、このターゲットをもとに
- ターゲットにとってどれくらいの価値がある商品なのか(=値段)
- ターゲットはどれくらい存在しているのか(=販売数)
を算出しなければならないからである。
本来はこの段階でようやく「何を売るか」も決めるべきなのだが、すでに商品が決まっている前提として話を進める(当然、この商品は誰かのためになるものであるという前提である)。
ターゲットを決めるうえで大切なのは、あなたが提供する商品が、ターゲットの利益もしくは欲を満たすものであるかどうかである。我々は「私利私欲」の反対語として「他利他欲(たりたよく)」と呼んでいる。簡単に言うと
- 商品を買うことで得をする(利益を得る)ターゲットであるか
- 商品を買うことで喜ぶ(欲を満たす)ターゲットであるか
という観点でターゲットを決めることが重要である。(これができないのであれば、やはり商品そのものを見直すことをおすすめする)
また、このターゲットについては、できるだけ具体的な人物像にすることをおすすめする。例えば、あなたが鍵紛失サービスを提供しようとしている場合、
- バイト終わりに深夜帰宅した大学生が家の前で鍵を紛失したことに気づいた
- 出張中のサラリーマンが飲み会でスーツケースの鍵をなくして宿泊先へ戻ってきた
- 出先で仕事中の母親に中学生の子供から鍵を紛失したと連絡があった
この3つの事例では、ターゲットが考えることや実際にとる行動などはさまざまであり、それぞれの立場に寄り添って「得」や「喜び」を考える必要がある。その理由は、ターゲットがその商品にどれほどの「得」「喜び」を感じるかで、その商品の価値が変わるからである。
3.値段と数量の仮説
ここまでに
- だれのために(ターゲット、得や喜び)
- なにを(商品●●)
を設定した。続いては、
- いくらで(価値、値段)
- どれだけ(ターゲット数、数量)
について設定していく。
ターゲットと彼らに与える得や喜びが決まったため、この商品●●がどれだけの価値であるべきかを考える必要がある。この時によくあるのは「原価が××円だから」や「利益が××円欲しい」という利己的な考え方だが、これではこれまでせっかく他利他欲に取り組んだ意味がない。最後まで、顧客第一の考え方で進めることを心がけよう。
競合他社のサービス内容や値段設定と比較し、ユーザーに得や喜びを与えるにはいくらであるべきか。もし原価が1万円の商品であるものの、他社と比較した結果30万円で売れそうなら、そのまま売ればよい。反対に、他社が5千円で販売しているのだとすると、その商品を根本から見直そう。誰にも得や喜びを与えない。
商品の価値・値段を決めることができたら、次はターゲットの数である(逆の手順でも問題ない)。ターゲットになりうる人々はどれだけいるのだろうか、きちんと調査しよう。この際、いますでに求めているユーザー(顕在顧客)だけではなく、これから求めそうなユーザー(潜在顧客、見込み客)も視野に入れることが大切である。
このタイミングで、ターゲットになりうる人々の数と商品の値段をかけ合わせて当初の目標に達しないのであれば、いま一度商品の見直しが必要である。ターゲットの数を増やすのか、商品の値段を上げるのか、どちらかができなければ目標は達成しない。いずれにしても必要なのは「商品にできることを増やす」ことである。
- ターゲットの数を増やす=その商品を求める人を増やす=商品にできることを増やす
- 商品の値段を上げる=その商品の価値を上げる=商品にできることを増やす
4.ここまでできてようやく方法論
さて、だれのために、なにを、いくらで、どれだけ販売すべきかが決まったところで、ようやく「どのように」という方法論の出番である。これについては書き出しに記載した通り、さまざまなメディアやまとめサイトに「丁寧に」まとめてくれている。我々も同じように、具体的な方法やそれぞれのメリットデメリットをまとめているので、ぜひ参考にしてほしい。
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我々が伝えたいのは、方法論も大切だがそれ以前に大切なことがたくさんあるということ。決して簡単なことではないため、社内で専任を立てるか、専門の企業に委託することをおすすめする。
5.まとめ
以上が、Web集客を始める際に最低でも必要となる「進め方」と「持つべきマインド」である。
大きな目的を決め、段階的に落とし込んでいくことが重要だが、ポイントとしては常に相手(ユーザー)のことを主として考えること。これにより、あなたのサービスは世に受け入れられるものとなる。
事業運営においては、いかに儲かるビジネスかも重要ではある。だがそれよりもまず、いかに他者のためになるものかについて考えてほしい。それが売上・利益につながる第一歩である。