『ポジショニング』という言葉を耳にしたことはあるだろうか。金融や投資業界ではしばしば用いられるこの言葉だが、近年では業種問わず「自身の意見や立ち位置を明らかにし、それに沿った行動をとる」という意味合いで使われるのを目にする。これに転じて、『事業運営におけるポジショニングとは』について考えた末、我々は次のように定義している。


商品・サービスの強みを理解し、その強みを活かせる状態にあること
(あるいはその状態にもっていくこと)

本記事では、このポジショニングが事業を運営する上でいかに重要かについて掘り下げ、事例を交えて紹介する。ぜひとも参考の上で、自社の置かれている状況を見直すきっかけとしてほしい。

1.ポジショニングが事業を左右する

1‐1.ポジショニングができない企業の危険性

ポジショニングができていない状態とは、すなわち「商品・サービスの強みを把握できていない」もしくは「強みを活かせる状態にない」ということ。この場合、当然のことながら、下記のような状態になりやすい。

  • 他社との差別化ができない
  • ユーザーの目に留まらない
  • 価格競争に陥る

もしあなたの会社がこの状態にある中で広告費を投入したとする。その広告は会社の商品・サービスの強みを表現することなく、誰の記憶にも残らないままただユーザーの目を通り抜けていくことだろう。これでは、せっかく投じた広告費はたれ流し状態となり、大切な予算を捨てたも同然である。このような状況で他社よりよい商品・サービスを生み出せるだろうか?そんなはずもなく、収益はただただ悪化する一方だろう。

1-2.ポジショニングによって生み出されるもの

では反対に、ポジショニングができた場合に生み出されるメリットについて考えてみる。我々は「少なくとも」下記の点でメリットが生み出されると考えている。

  • 集客数の増加
  • コンバージョン率の増加
  • 広告費の削減
  • 顧客獲得単価の削減

それぞれについて解説していこう。
(この辺りは一般論のため、すでに知識がある方には鍵となる2章から読んでもらいたい)

1-2-1.集客数

まず、集客数の増加について。集客に重要なのはただ一つ「いかにユーザーをひきつけるか(ユーザーの目にとまるか)」のみである。言い換えると、目にとまりさえすれば必ず集客数は増えるわけである。では、目にとまるか否かはなにに影響されるのだろうか。ユーザーの気持ちになって考えてみよう。

  • 目新しい情報であること
  • 検索した際に上位に表示されていること
  • 自身が求めている情報に近い見出しであること

ざっとこの辺りだろうか。

1点目の目新しさは、他に比べて情報の差別化ができているか否か、ということであるが、商品・サービスそのもののポジショニングができていれば自ずと差別化につながる。

2点目の上位検索については、SEOやリスティング広告など、運用の中でポジショニングができていれば解決できる。

3点目の求めている情報に近い見出しかについては、そもそもユーザーのニーズを捉えているかによるわけだが、1点目と2点目さえできていれば、自ずとニーズに刺さる見出しを打ち出せるものである。

すなわち、各プロセスにおいてポジションさえ取れれば、簡単に集客できるのである。

1-2-2.コンバージョン率

次に、コンバージョン率の増加について。各商品・サービスや各会社によってコンバージョンの定義は異なるが、Web業界におけるコンバージョンとは、Webサイトの運営者が設定している「成果」を、アクセスしてきたユーザーが達成することを指すことが一般的である。

またコンバージョン率(CVR)は通常

コンバージョン率(%) = コンバージョン数 ÷ 訪問ユーザー数(集客数)

で算出されるが、簡単にいえば、Webサイトを訪問したユーザーに対していかに多くコンバージョン(成果)に結びつけたかという指標である。

例えば、コンバージョンを「問い合わせ」と定義している不動産仲介業者がいるとして、サイト訪問者数と問い合わせ数によるコンバージョン率の例は下記のようになる。

サイト訪問者 100名:問い合わせ 1名 → コンバージョン率 1.0%
サイト訪問者 200名:問い合わせ 1名 → コンバージョン率 0.5%
サイト訪問者 200名:問い合わせ 3名 → コンバージョン率 1.5%

例を見てもらうと分かるように、サイト訪問者数(集客数)が上がれば良いかというとそうではない。訪問者数が増えても、問い合わせ(コンバージョン)が増えなければ、当然ながらコンバージョン率も増えないのである。では、コンバージョン率の増加にポジショニングがどのように影響するのだろうか。

 

コンバージョン率の増加のためにはいくつもの施策が考えられるが、基本となるのは、ユーザーが求めている情報を正しく伝達できているかである。あなたが情報提供者だとして、伝えたい情報を伝えるべきユーザーだけに伝えることができれば、コンバージョン率は必ず増加する。

あなたがポジショニングに注力し、商品・サービスの強みを正しく理解し、それを活かす方法を分かっていれさえすれば、必要なユーザーへ正しく情報伝達することなど、簡単なことである。

1-2-3.広告費

続いて、広告費の削減について。ここでは定量的に説明したほうが早いため、仮の事業をベースに説明する。早速だが、あなたはECサイト運営者だとして、サイト運営状況を以下のように仮定する。

月間集客 10,000人 × コンバージョン率 1.0% × 客単価 10,000円 = 月間売上 100万円

この時、月間の売上を維持したまま、広告費を削減したいと考えたとする。客単価は広告の影響が低い(商品やサービスそのものの影響が大きい)ため簡単には改善できない。そうすると、残りの項目は集客数とコンバージョン率。同じ広告費でこの2つの項目さえ維持すれば、売上も維持できるのである。では、集客数とコンバージョン率はどう維持する(増加させる)のか?
その答えは画面を上にスクロールすれば出てくるだろう。ポジショニングさえできれば、広告費用の効率的な運用につながるのである。

1-2-4.顧客獲得単価

最後に、顧客獲得単価の削減について。顧客獲得単価とはコンバージョン単価とも言われ、マーケティング業界ではCPAと略されるものである。簡単に言うと、1人の顧客(コンバージョン)を獲得するのにいくらのコストをかけたかというもので、算出式としては

顧客獲得単価(CPA) = 広告費 ÷ 獲得顧客数(コンバージョン数)

となる。

広告費を固定したとすると、重要なのは「獲得顧客数(コンバージョン数)」がいかに多いかである。ここで、前に記載した式を思い出してほしい。
コンバージョン率 = コンバージョン数 ÷ 訪問ユーザー数(集客数)
すなわち、
コンバージョン率 × 訪問ユーザー数(集客数) = コンバージョン数
である。
コンバージョン率と集客数が増えると、コンバージョン数が増え、顧客獲得単価が減る。もう言うまでもないだろう。ポジションさえ取れれば、全て改善するのである。

2.ポジショニングができるかどうかを分けるポイント

2‐1.意外と誰でもポジションは取れる

これまでに記載の通り、ポジショニングに重要なのは商品・サービスの差別化であるが、中には差別化が難しい業種も存在するであろう。

例えば、鍵紛失の緊急サービスなどを考えてみよう。各社それぞれ「かけつけ時間」「金額」「対応できる鍵の種類」に対して差別化しようとするだろう。だがこれでは「価格競争」にほど近い状態にあるといえ、ポジションを取るのは簡単ではない。

そこで、もう少しユーザー目線で考えてみる。ユーザーが知りたい情報は先ほど挙げた「どれだけ早く」「いくらで」「うちのカギを直せるのか」であるが、調べるのはどういう状況で、調べる方法は何だろうか。家の外で鍵を求めて立ち尽くすユーザーは、家でパソコンを見るわけでもなく、紙の広告を探し歩くわけでもなく、そのほとんどが手持ちのスマホや携帯電話からあなたの会社のWebサイトへアクセスするだろう。ではここで生み出される「差別化」とは何だろうか。

そう、いかに早く「どれだけ早く」「いくらで」「うちのカギを直せるのか」を「その場で判断できるか」が文字通り鍵となる。
逆算していくと、

  • うちのカギを直せるか
    →鍵穴の形や鍵の種類を知らせる方法があるか
  • いくらで
    →鍵の種類と数をもとにおおよその金額を調べられるか
  • どれだけ早く
    →住所を伝えておおよその時間を調べられるか

によってサービスレベルが決まることになる。ではこれらをどう実現するかについて考えてみよう。

例えば、Webサイトにチャット機能を追加し、画像を用いてやり取りできる機能を付け加えてみてはどうだろうか。これによりユーザーは慣れない専門用語(鍵の種類など)を必要とせず、その場にあるモノ(スマホや携帯電話)のみでプロに頼ることができる。金額やかけつけ時間の差別化をせずとも、あなたの会社を選ぶことだろう。

一方で「チャットの体制に手間やコストがかかる」そんな意見も出てきそうなので、もう少し簡単な対応も考えてみよう。例えば、対応できる鍵の種類を画像で一覧表示して、それぞれの過去実績を参考費用として載せてみるのはどうだろうか。加えて、対応できる市街地ごとに目安のかけつけ時間や交通費を記載すると、ユーザーにとっては情報量が増えることになる。これにより、わざわざ問い合わせずともユーザーはおおよその対応可否や予算感を判断できるようになる。こうなれば、よほど怪しい金額提示でない限り、安心してあなたの会社へ連絡してくるだろう。

2‐2.必要になるブレーン

このようにポジションを取っていくうえで大切なことは、いかにユーザーの「思考」「行動」それぞれの導線をたどることができるかである。手法はさまざまであるが、重要なスキルとして想像力といかに客観的にとらえられるかの力が求められることは間違いない。このスキルを持つ人材がいる会社は、今すぐにでもポジショニングが可能であるため、急いで会議を始めるべきだ。
もし社内に該当する人物がいない場合は、投資リスクが低く(初期費用が少なく)かつ信頼できる人物をアサイン(もしくは企業に委託)し、第三者の視点で意見をもらうことをおすすめする。

3.ポジションの取り方

いかにポジショニングが重要か、ポジショニングとはどういうものかについて理解いただけただろうか。続いては、実際に我々が取り組んでいるポジションの取り方について説明する。

3‐1.どうしても必要になる3C分析

ここまで読んでくれているあなたはおそらく「商品・サービスの強みを知らない」もしくは「強みはあるのに活かせていない」という状況に置かれているのだろう。この場合、前者と後者ではやるべきことが大きく異なるのだが、ただひとつ共通して必要となる項目がある。それが「3C分析」である。近年ではだいぶ知られてきたこのワードだが、我々はこの手法をとても重要視している。これさえしっかりできていれば、あとはどのポジションに行きたいかを考えるだけでよい。

3C分析とは「競合(Competitor)」「自社(Company)」「顧客(Customer)」これら3つのCを深く分析し、市場やニーズをとらえる手法であるが、あえて簡単にいえば

競合(Competitor)にない自社(Company)の強みを顧客(Customer)の要求にマッチさせる

これだけでポジショニングができ、その商品・サービスは必ず売れる。

3‐2.強みの生み出し方

さて、前に記載した通り「強みを知らない」と「強みを活かせていない」では、まずやるべきことが大きく異なってくるわけだが、前者から説明しよう。

いまあなたが「商品・サービスの強みが分からない」と考えているとして、この場合大半の会社が「うちの強みは何だろうか」と社内会議を始めるようだ。だが、その発想から変えてみてほしい。強みというのは、探すものではなく生み出すものなのである。

では、どのように生み出すのかについて考えてみる。

我々がもっとも重要視しているのは、「デモグラフィックスを超えたペルソナ」の設定である。デモグラフィックスとは一般的に、性別・年齢・職種・所得・世帯規模・学歴・住所のような情報を指し、ペルソナ(ターゲット)設定に用いられる。だが、これでは対象の人物像としての情報は少なく、具体的なユーザー像がまったく見えてこない(少なくとも我々にはただのレイヤ分けにしか見えない)。ペルソナ(Persona)とは字のごとく「人物(個人)」を表現するものであり、極端にいえば、その人物の顔や状態まで含めた像であるべきなのである。先ほどの鍵紛失サービスの例でいえば、

  1. バイト終わりに深夜帰宅した大学生が家の前で鍵を紛失したことに気づいた
  2. 出張中のサラリーマンが飲み会でスーツケースの鍵をなくして宿泊先へ戻ってきた
  3. 出先で仕事中の母親に中学生の子供から鍵を紛失したと連絡があった

などというシーンを想像し、その人物の思考および行動の導線を思いえがく必要がある。この導線がサービスの柔軟性やユーザーのニーズをとらえるかどうかに大きく影響するのである。

一方で、ペルソナの具体性を高めるあまり、汎用性を見失いすぎることも多々ある。これを避けるために、ペルソナについてはいくつかの人物像を設定することをおすすめする。もっといえば、各ペルソナに優先度(ターゲットとして囲い込みたい順番)を付けることにより将来的な見込み客の設定なども合わせて進めると、強みの拡張につながりやすくなるため、ぜひ試してほしい。

さて、整理のために一度3C分析に話を戻すと、

競合(Competitor)にない自社(Company)の強みを顧客(Customer)の要求にマッチさせる

ここでいうところの「顧客(Customer)」についてペルソナで仮説を立てたところである。次はこの顧客の要求を具体化し、その要求にマッチする強みをいくつか考えることが必要だ。この際、考えついた強みを「競合(Competitor)」が持っていては意味がなく、できる限り自分たちだけの価値を生み出すことに専念してほしい。

前に書いた鍵紛失サービスの例でいえば、本来打ち出したい価値(金額、かけつけ時間、対応種類)だけに焦点を当てるのではなく、それ以外の「顧客の要求」を強引に引っ張り出し、そこに価値を見出すことができれば、それは十分にあなたの強みになりうる。強みを生み出すためにはいかに客観的に考えられるかがミソであり、それほど難しいことではない。その気になればすぐにでも生み出せるものなのである。

3-3.強みの活かし方

何度も書いている通り、「強みを知らない」と「強みを活かせていない」では、やるべきことが大きく異なってくる。前の項では前者に対する強みの生み出し方をまとめたが、次は「すでにある強み(もしくは強みだと認識しているもの)を活かせていない」という状態について。この場合もっとも多いのが、強みそのものではなく、強みの伝え方に問題があるケースである。すなわち、強みである情報がユーザーへ届いていない、もしくは情報として届いてはいるが強みとして理解されていないという状態だ。この対処方法はさまざまであるが、我々がもっとも注力して取り入れているのは、Webによる広告運用である。

Web広告のいいところは、

  • 流入(ユーザーが何をきっかけに訪れてきたのか)
  • 導線(ユーザーがどのように閲覧したのか)
  • 離脱(ユーザーがどこで興味をなくしたのか)

を把握できる点にある。自身の強みが届いているのか?強みと認知されているのか?そもそも他と比べて強いのか?という各視点から分析できるため、「強みの活かし方」を何通りも立てることができるのである。ただし、この運用についてはテクニックが必要になるため、決して適当に取り組むのではなく、自社で専任を立てるか、もしくは信頼できる外部リソースに委託することを強くおすすめする。

4.まとめ

以上が、ポジショニングの定義とその重要性である。
自社だけでなく顧客や競合の状況をふまえたうえで、強みを創りだすことがポイントとなる。さらに、その強みを活かすことで、その効果はさらに増し、効率の良いサイクルが生まれる。

今分かっている差別化ポイントだけではなく、本記事で紹介した方法を用いてさらなる強みを生み出し、圧倒的なポジションを確立してもらいたい。